世の中は多様性の時代に向かっています。
企業もまた、従業員の多様な価値観、多様な働き方を受け入れていくことが求められています。
ですが、異なる価値観を持つ人間同士が、果たして組織の中でうまくやっていけるのだろうかという疑問も残ります。
仕事のビジョンや価値観を共有し合うことが、チーム活動においてプラスに働くことは間違いありません。
そして何より、人間同士の相性というのは、おそらく我々が思っているよりもはるかに根深いものであるからです。
会社はこうした社員同士の「相性」の問題にどう向き合っていくべきなのでしょうか?
人間同士の相性は「ケミストリー」
企業における社員同士の相性の問題はきわめて根深いようです。
先日、このようなニュースを目にしました。
人間同士の相性のことを英語では「ケミストリー(chemstry)」と言います。
上の記事の中でも触れられていますが、この英語のケミストリー(化学反応)という言葉にはこの人間同士の相性というものの重みがうまく表現されています。
すなわち、尖った人間同士でも相性次第ではうまく機能することもあるし、逆に無害な人間同士であってもお互いが交わることで大きなトラブルを引き起こしかねないということです。
「水酸化ナトリウムと塩酸は個別にはどちらも激烈なもので、金属をも溶かす力があるが、これを化合すれば食塩となって普段の台所で役に立つ。一方、石炭と塩化アンモニウムはともに激烈な作用をもつわけではないが、このふたつを化合すると気体アンモニアとなり、人を卒倒させる」(現代語訳『文明論之概略』福澤諭吉著、齋藤孝訳、ちくま文庫、153頁)
引用元;幻冬舎GOLD ONLINE サラリーマンの人事…「優秀な社員がリストラされた」理由
多くの人々にとって、職場の悩みの大半は人間関係によるものだと思いますが、人間関係の問題の原因は個人の問題ではなく個人間の相性によるものだと言われています。
どちらか一方に原因があるというわけではなく、その相性の悪さによって問題が引き起こされている場合が多いのです。
ですから、企業はこの社員同士の「相性」というものと真剣に向き合っていかなければなりません。
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会社は社員同士の相性の問題にどう向き合うべきか
では、会社は一体どのようにこうした社員同士の相性の問題に向き合っていくべきなのでしょうか。
まず、再考すべきことは人事評価のあり方だと思います。
特に、日本の企業では評価者の主観に左右されやすい情意評価(社員の仕事に対する態度や意欲の評価)が主流となっているケースがよく見られます。
このような評価において、自分とは価値観が異なる相手や相性の悪い相手に対して正当な評価が与えられるのか、大いに疑問が残るところです。
また、一般的な企業における人事評価というのは上司が部下を評価するという形になるとは思いますが、このような一方的な評定ではその上司と部下の相性というファクターがなかなか見えてきません。
上司の一方的な言い分を聞くのではなく部下側の話も聞く、または上司だけでなく同僚や他の部署の人間の話も聞いた上で最終的な評価を行う、このような相互評価や多面評価(360度評価)の考えを取り入れていくことも、そういった相性を可視化する上で、ひとつの手ではあるとは思います。
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人と人の「相性」を合理的に捉える
相性の悪い上司と部下や社員同士の関係を改善していく、また必要に応じて配置転換などを検討していく、そういった仕組みを構築することが会社には必要なことなのだと思います。
相性の合わない職場や人間同士で働くことは、お互い、さらには会社にとっても決してプラスには働かないと思います。
どちらかのパーソナリティに著しく問題があるというわけでは必ずしもないのです。
もちろん、お互いにすり寄る努力をするといったことは大切なことだとは思います。
しかしながら、それは個人の強みを打ち消し合うことにもつながりかねません。
企業には、人と人の「相性」を合理的に捉え、その相性もふまえた組織作りをすることが求められています。
企業が多様性を受け入れていくとは、そういうことを含めた話でもあるはずです。
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