情報や思考を構造化することは仕事のアプローチとして大変有効です。
情報を抽象化したり具体化したりできることはビジネスパーソンの重要なスキルのひとつだという話は以前にさせていただきました。
この情報の抽象化と具体化、最近ではどちらかというと抽象化のアプローチのほうがもてはやされる傾向にあるような気がします。
確かに、抽象化には物事の本質を見抜いたり、あるいは情報の共有化や標準化を図りやすくなるといったメリットがあり、仕事においては欠かすことできないスキルです。
ですが、そればかりを追求していてもダメで、具体性をもった考えや専門的な知識もやはり大切です。
それを備えていて初めて抽象化のアプローチが活きてくるのだと思います。
話を抽象化できると頭がよさそうに見える
情報を抽象化するとは、その情報をひとつ上の階層から考える、つまり上流から物事を考えるということになります。
ですから、情報や思考を抽象化できる人というのは上流から物事を考えられる人と捉えられ、そのため周りに対して頭がよさそうな印象を与えることができるのです。
実際、顧客が抱える問題の上流側での解決方案を提案するコンサルタントなどは、はったりも含めてこの抽象化のスキルは必須スキルとなってきます。
抽象化スキルは錯覚資産として有効
私もそうですが、この抽象化スキルは意識高い系のビジネスパーソンに大人気です。
というのも、この抽象化スキルは錯覚資産として非常に有効です。
(「錯覚資産」という言葉は、ふろむださん著の「人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている」で提唱された概念で、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」のことです。興味がある方向けに下にリンクを貼っておきます。)

ちなみに、抽象化といっても色々とあって、たとえば会議の場で上司やベテラン社員がこちらの説明に対して「わかりやすく言うと~」と言って口を挟んでくることがありますが、あれも抽象化のひとつです。
そうやって話を抽象化することで自分をひとつ上のレベルから物事を考えているように見せることができる(と少なくとも本人は思っている)のです。
抽象化は錯覚資産としては有効なので、巷には抽象化に関する書籍や情報があふれています。
抽象化を学ぶだけではダメ
ただ、こうした抽象化スキルに関する書籍または情報系のサイトを見れば一流の仕事ぶりが学べるかと言われると、それがそうとも言いきれません。
巷に出回っている出版物を見ると、「元〇〇社員が語る~の技術」とか「〇〇で学んだ~の技術」(〇〇には大企業や有名コンサルの名前)だとか名のついた書籍が多く存在します。
まず、この時点でこれ自体が錯覚資産で、企業のネームバリューやブランド力で内容にも価値があるように思わせているわけです。
それ自体はまあ良いとして、実際に中身を見ていくと案の定そんなに大したことは言ってなかったりします。
確かに仕事に展開できる内容はあるけど、それって仕事のほんの一部だよねといった内容だったりします。
抽象化は仕事のほんの一部
そもそも、コンサルはまだいいとして、たまに元大手メーカーの社員がそうした抽象化スキルに関する本を出していたりするわけですが、日本のメーカーが優れているのって間違いなく専門性の部分だと思うんですよね。
ですから、そういった元大手メーカー社員が専門的または技術的なことを語るのならまだしも、抽象化のスキルを語ったところで別にそれはその会社の強みではないというか、やっぱり錯覚資産以外の何物でもないと思うわけです。
(もちろん、そういった本のすべてがダメということではなく、有名企業の社員が書いた本=良い内容が書かれているという認識が誤りだというだけです。)
エンジニアは具体化スキルのほうが大切
ですので、やはり仕事を進めていくのであれば専門的な知識を身につけていくことが大原則です。
私はメーカー勤務の元エンジニアなのですが、エンジニアのもっとも重要なスキルは抽象的な課題を具体的なタスクや仕様に落とし込めることだと思ってます。
これらは専門的な知識が備わっていないとできないことですから、やはりエンジニアの人は専門性(具体化スキル)を磨くことのほうが大切だと思います。
錯覚資産として利用していく
あと、一応断っておくと、私もビジネスに関する内容を書いているわけですけども、私の仕事におけるスタンスとしてはこれらの知識を錯覚資産としてうまく利用していこうというスタンスです。
要するに、抽象化って要は話の一般化ですから、ある程度慣れてしまえば意外と簡単にできてしまうんですよ。
それでいて、うまくそれを使えれば自分を賢そうに見せられるわけで、断然お得なわけです。
ですから、実際に役に立つかは置いておいて、抽象化は錯覚資産としては有効ですよ、だからどんどん活用していきましょう、というのが私の意見になります。
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