会社は「辞めたい」から辞めるのではなく「辞められる」から辞める【原因論と機会論】

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最近は何かと人手不足という言葉を耳にする機会が増えているような印象を受けます。

そのような状況の中で、企業側もなんとか社員の離職を防ごうとさまざまな取組みを試みています。


では、社員の離職を防ぐためにはどのよう方法が有効なのでしょうか。

会社を辞めたいと考えている社員の立場からこの問題について考えてみます。

「辞めたい理由」を知ることにあまり意味はない

社員が会社を辞めたいと思う、あるいは実際に辞めてしまうからにはその理由、つまり会社を辞めたいと考えるように至った経緯が存在するはずです。

ですから、多くの会社は社員の離職を防ぐために退職する社員からその理由をヒアリングしたり、もしくは現役の社員から会社の不満などを聞き出したりすることに努めようとします。


ですが、このような対応にはいくつか問題点もあります。

まず第一に、退職するまたは現職の社員から不満を聞き出したところで、それらの不満因子をすべて取り除くことなど実質不可能と言えます。

その問題点が会社の本質的な問題だとすれば、そう簡単に解決できるものでもありません。

そもそも、たかだか一人か二人の社員が口に出した会社の不満ひとつひとつに対処していくというわけにもいきません。

社員から不満を聞き出したところで、それに対処していくことはなかなかに難しいのです。


そもそも、会社を辞めたい理由や不満を探ることが本当に離職防止につながるのでしょうか。

私はそうは思いません。

事実、私自身も会社を強く辞めたいと思っている人間の一人ではありますが、それを実行することなく現状維持に甘んじています。

それは何故かと言えば、私にはこの会社を辞めて他所の会社で働くという機会がなかったからに過ぎません。


結局のところ、会社を辞める人とそうでない人の差は、ただそのチャンスがあったかどうかの差に過ぎないのだと私は考えています。

犯罪の「原因論」と「機会論」

この問題は犯罪学における「犯罪原因論」と「犯罪機会論」の考えによく似ていると思います。

犯罪原因論は、犯罪の原因をそれを犯した人間の人格や境遇などに求める立場の考えです。

犯罪が起こったとき、報道番組などではこのような犯行に至った動機を解明するという体で犯人の生い立ちなどにスポットライトが当てられることがよくありますが、これは犯罪原因論的なアプローチと言えます。


一方で、犯罪機会論は犯罪を犯そうとする人たちにその機会を与えないことで犯罪を未然に防止しようとする立場の考えです。

空き巣対策として、空き巣をする人々のプロファリングをすることはあまり有効な策とは言えません。

それよりも、空き巣にとって侵入しにくかったり、あるいは侵入しても即座に気づかれてしまう環境を整えるなどして空き巣の侵入の機会を奪うことのほうが空き巣対策としてはるかに効果的だと言えるでしょう。

このような考えが犯罪機会論的に基づく考えです。

社員の離職を防ぐ方法

私は、このような考えは社員の離職の問題にも当てはめられるものだと考えています。

すなわち、社員の離職を防ぎたいのであればむしろそれを実行できない、あるいは実行しにくい状況に社員を追い込むことが有効だと言えます。

社員にそれなりの実力が備わっていれば、転職の機会は生まれやすいでしょう。

ですから、社員の離職防止の観点からすれば、社員が成長していくことはあまり喜ばしいこととは言えません。

それよりも、自社ではそれなりに役立つけれども他所では通用しない、そんな社員を育てるほうが理にかなっているとも言えます。


会社は「辞めたい」から辞めるのではなく「辞められる」から辞めるものです。

会社の離職率の低さを必ずしも肯定的に捉えるべきではありません。

社員の「辞められる」という機会を奪う、またはそのチャンスを与えない会社であるかもしれないからです。

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