価値や品質を定量化することの意義

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日本メーカーが手掛ける製品、特に家電製品に対してよく挙がる指摘が、日本メーカーの製品は余計な機能がやたらとついているといったものです。

無駄な機能が多く、それが価格にも上乗せされているため価格が高い、その一方でデザイン性が低く、使い勝手も決して良いとは言えない。

このような日本メーカーの製品に対する批評を目にしたことは一度はあるのではないでしょうか。


上記の話が最終的に行き着く先は製品の本質的な価値の話になります。

先ほどの例で言えば、「目に見える数字だけで製品の価値を判断できるのか」といったことがひとつの議題になるでしょうか。

つまり、単純に製品に搭載されている機能の数(数値)だけで商品の価値の優劣が決まるわけでは決してないわけです。

そして、デザインや使い勝手という数値で表すことが困難なものに確かな価値が認められる以上、目先の数字にはたいした価値がないのではないか、価値や品質というものを数字で表すことはできないのではないかといった話につながるわけです。


私もこのような品質に関わる仕事に携わる身として、製品の価値や品質の本質というものについて考えさせられることはよくあります。

確かに、その価値や品質の本質が具体化(定量化)されていない分野はまだまだ数多く存在するのが実情です。


ですが、世の中は今後こうした価値や品質の要件の定量化が進んでいくはずです。

また、そのような価値や品質の定量化、数値化を行っていくべきだというのが私の主張でもあります。

なぜ藤川のストレートは空振りを奪えるのか?

こうした能力や価値の定量化が進んでいる分野の一例として、野球のセイバーメトリクスが挙げられます。

セイバーメトリクスは、野球の様々なデータを統計学的な見地から分析していく手法です。

セイバーメトリクス全盛の現代では、野球のプレイヤーのピッチング、バッティング、守備、走塁など、プレイヤーによるほぼすべてのパフォーマンスが定量化され、プレイヤーの価値が可視化されるようになっています。

【参考記事】


このセイバーメトリクスというのは、プレイヤーが残した結果に基づく統計値です。

ですが、一方で野球界においてはこの結果に至るプロセスの解析、定量化というのも進んでいます

優れた結果を残すプレイヤーがいたとして、なぜそのプレイヤーは優れた結果を残せるのか、すなわちそのプレイヤーのメカニックの解析です。


その一例が、投手が投げるストレート(直球)の質です。

古くから、ストレートの質という概念はありました。

同じ球速帯のストレートを投げる投手であっても、そのストレートで簡単に空振りをとれる投手もいれば、簡単にバットに当てられてしまう投手もいます。


代表例がプロ野球の阪神タイガースに所属する藤川球児投手のストレートです。

藤川投手の投げるストレートは魔球とも称され、対戦した打者が口をそろえて話すのは、藤川投手のストレートは打者の手元で浮き上がっているように見えるというものです。

藤川投手の投げるストレートは、他の投手が投げるストレートとは文字通り「質が違う」のです。


このように、投手の投げるストレートの質に違いがあることはこれまでも広く認知されていました。

それらは「キレのあるボール」「ノビのあるボール」といった表現で語られてきましたが、その違いを生む要因についてはあまり深堀りされてこなかったのです。

ボールの質はプレイヤーについてくるもの、プレイヤーの才能として捉えられてきました

価値や質の定量化

ですが、技術の進歩とともにその要因は解明されつつあります。

現代では、ストレートの質を決める構成要素として、「球速」のほかにボールの「回転数」と「回転軸」があることがわかっています。

この回転数と回転軸の違いによってストレートの揚力(変化量)に違いが生じるため、同じ球速帯であってもストレートの質に違いが生まれるのです。


こうした技術の解明は、プレイヤーの実力を評価する際の精度を一層高めてくれるものです。

プレイヤーの成績(結果)はいわば単なる統計値に過ぎませんが、そこにその結果を生み出す科学的な裏付けが加わることで、その統計の信憑性も増すからです。


また、こうした技術の解明は、そのプレイヤーのみならず今後の他の選手の指導にも活きるものです。

優れた結果に結びつく指標が明らかになっていくことで、それを向上させていくためのメカニックの研究も進むはずだからです。

先ほどのストレートの質の話で言えば、投手はただ球速を追い求めるだけではなく、回転数や回転軸にも意識を置いたトレーニングを積んでいくことで結果の向上につなげられる可能性があるのです。

ほかにも、自身のボールの質が客観的な数値として表されるようになることで、より自分の強みを知ることにもつながるでしょう。

実際、このようなデータを基に自分の持ち玉の強みを分析し、それを投球に反映させることで成績を向上させているプレイヤーも数多く存在します。


これまでプレイヤーのセンスや勘・コツに頼ってきた部分が可視化され、より多くのプレイヤーの練習や指導、さらには実際のプレーにまでそれを展開できるようになってきているのです。

価値や品質を定量化することの意義

技術の進歩とともに質(品質)の定量化は進んでいます。

これまでは定性的、感覚的に捉えられていた概念を定量化することに成功している例はいくつもあるのです。


数字で表すことが必ずしも「絶対」というわけではありません。

ですが、多角的な視点で物事を捉えるための手段として、このような定量化は大変意義のあるものだと思っています。

これまで個人のセンスや経験に頼っていた部分が可視化されることで、より多くの人がその価値に触れることができるようになります。

定量化を図ることで、これまで認知されてこなかった価値や強みが明らかになることもあるでしょう。

商品の強みや弱み、機会や脅威を分析するSWOT分析などのマーケティングや競争戦略を考える上でも、このように定量化された価値や強みを知ることは大いに役立つはずです。


さまざまな要素から構成される製品やサービスだからこそ、それら要素ひとつひとつの価値や品質を見極める必要がある、それにはこうした価値や品質の定量化が大いに役立つはずであると私は思っています。

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