庶民がウォール街のエリートを打ち負かす?投資アプリ「ロビンフッド」の躍進と個人投資家の反乱

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ロビンフッド(Robin Hood)は中世イギリスにおける伝説的な人物です。

ロビンフッド伝説は、貧しい人々を助けるために貪欲な僧侶や裕福な貴族から富を奪う義賊の物語です。


この伝説上の人物の名を冠した米国の投資アプリ「ロビンフッド」の登場によって、多くの若者たちが投資に触れるようになりました。

しかしながら、こうした個人投資家の増加は米国の株式市場にある影響を及ぼしつつあります。


急増した個人投資家たちが一致団結して庶民の敵である憎きウォール街の機関投資家を打ち負かす、そんな民衆の反乱とでも呼べるような出来事が現実に起こりつつあるのです。

証券業界に革命を起こした「ロビンフッド」

写真:ノッティンガム ロビン・フッド像


スマートフォンアプリのロビンフッド米国のロビンフッド・マーケッツ社(以下ロビンフッド社)が提供する株式取引アプリです。

ロビンフッド伝説は貧しい人々を助けるために貪欲な僧侶や裕福な貴族から富を奪う義賊の物語ですが、「庶民を金持ちと対等な立場に引き上げたい」という理念から生まれたのがこの投資アプリのロビンフッドです。


このロビンフッドの特徴として、取引手数料無料かつ端株取引(1株に満たない株式の取引)が可能という点が挙げられます

これによって、ユーザーはきわめて少額の資金で投資を始めることができます。

これは、裕福な富裕層だけでなく貧しい庶民にも投資のチャンスを提供したいという同社の理念から来ているものです。

加えて、まるでゲームのような感覚で株式の取引ができるシンプルなサイトデザインやインターフェイスの使いやすさなどが米国の若年層たちに支持され、現在ロビンフッドは1300万人を超えるユーザーを獲得するまでに至っています


ロビンフッドは多くの若者たちが投資に触れる機会を生み出しました。

その結果、ロビンフッドは「証券業界に革命を起こした」とも称されるようにもなったのです。

株式投資を「民主化」する

ロビンフッド社が掲げるスローガンは「金融の民主化」で、「株式投資を伝統的証券会社や投資信託などのプロから個人の手に戻して「民主化」しよう」というものです。

このスローガンは、格差社会が進む米国の多くの若者たちの心に突き刺さりました。


そんなロビンフッドの利用者たちは「ロビンフッダー」と呼ばれ、彼らの投資判断に強く影響を及ぼしているのが「Reddit」などのSNSや匿名掲示板です。

「Reddit」の中の人気フォーラム「WallStreetBets」では、350万を超える個人投資家たちが投資に関わる情報を交換し合っています。

しかしながら、このフォーラムで交換されるのは純粋な投資情報に関わるものだけではありません。

中には、ユーザーに相場操縦的な投資行動を呼びかけるものも少なくありません。


昨年9月末、Redditのフォーラムには以下のようなタイトルの記事が投稿されていました。

「Bankrupting Institutional Investors for Dummies, ft GameStop」
(サルでも分かる機関投資家を破産させる方法、ゲームストップ編)

時代遅れで衰退の一途を辿る企業のはずだった

米国の企業ゲームストップは、ショッピングモールでビデオゲームのパッケージソフトを販売するという今や完全に時代遅れで今後は衰退の一途を辿る企業のはず、誰もがそのように考えていました。

一部のヘッジファンドや機関投資家たちは、このゲームストップ株の空売り(株価が下がることで利益が得られる投資法)を執拗に続けていました。

しかしながら、このゲームストップの株価は今年に入って歴史的な値動きを見せることになります

今月半ばまで1株10ドル台に過ぎなかったゲームストップの株価は今月28日には一時482ドルをつけるなど、きわめて短期の間に株価は10倍以上にも急騰したのです


この値動きの背景には、株取引で多額の利益を叩き出すウォール街のヘッジファンドを敵視する個人投資家たちの存在があります

特定銘柄の空売りを公言しているヘッジファンドを大損させるために、個人投資家たちがRedditなどのSNSや掲示板で通じ合い、一致団結してその銘柄に買いを入れるのです。

そうして株価が上がると、空売りトレーダーは損失を出して株を買い戻すことを余儀なくされます。

また、そのこと(株を買い戻すこと)が株価をさらに押し上げる要因にもなるため、マネーゲーム化し、ときに信じられない株価の急騰劇につながることがあります。


このゲームストップ株の異常な株価の急騰により、同社株の空売りを行っていたヘッジファンドはその撤退を余儀なくされました。

このヘッジファンドの損失額は数十億ドルにも及ぶとも言われています。

ウォール街のエリートたちが個人投資家との戦いに敗れたのです。

「ロビンフッド」の躍進と個人投資家の反乱

このゲームストップ株をめぐるマネーゲームは、今月28日に新たな局面を迎えました。

個人投資家ユーザーを数多く抱えるロビンフッドは、今月28日に突如ゲームストップ株の取引制限を課したのです。

いわばウォール街の金融エリート側についた格好となり、ロビンフッドの対応はユーザーから強い反発を招きました。

その翌29日には一転、再び取引制限を緩和するなど、この一連の騒動によりゲームストップの株価は今もなお乱高下を続けています。


株式市場は長年ウォール街の投資家によって私物化されているなどと非難されてきました。

最近でも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で多くの人々が失業したり日々の生活に苦しんでいるにも関わらず株価は上がり続けており、ウォール街の投資家たちはその恩恵を享受してきました。

今回の出来事は、いわばそんなウォール街のエリートたちに対する反乱とでも呼べるでしょうか。


ゲームストップの株価を押し上げたのは、ロビンフッドなどを利用する個人投資家たちです。

ロビンフッドなどの影響で急増した個人投資家たちが一致団結して庶民の敵である憎きウォール街の機関投資家を打ち負かす、そんな民衆の反乱とでも呼ぶべき出来事が現実に起こりつつあるのです。

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