セイバーメトリクスの守備指標「UZR」とは?【客観的な守備の評価】

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セイバーメトリクスは、野球の様々なデータを統計学的な見地から分析していく手法です。

今回は、セイバーメトリクスの守備の評価指標UZRについて紹介させていただきます。

UZRとは

UZRUltimate Zone Ratingの略で、リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだかを示す指標です。

具体的な算出方法は以下の通りです。

UZRの算出においては、まずグラウンドを多数の「ゾーン」に区分し、各ゾーンについて発生した打球の種類(バント・ゴロ・外野へのライナー・外野へのフライ)や速度(遅い・中間・速い)を記録する。そしてそれぞれのゾーンにおいて生じた特定の種類の打球についてリーグ全体でどれだけのアウトが記録されたかを算出する。このデータを基に、個別の野手のプレーを評価し、各種の補正を合わせて「リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか」を計算する。

引用元-Wikipedia

守備率は打率の守備版?

野球における守備記録のひとつに守備率という指標があります。

この守備率は、守備機会に対して失策しない確率を示す指標であり、以下の計算式から算出されます。

守備率 = (刺殺 + 補殺) ÷ (刺殺 + 補殺 + 失策)


難しい用語が使われていますが、簡単に言うと全守備機会のうちアウトを獲得した確率となります。

この守備率、その名前から打率の守備版のように捉えられがちですが、両者には大きな違いがあります。

打率と守備率は似て非なる指標

打率と守備率の計算式はそれぞれ以下のようになっています。

打率 = 安打数 ÷ 打数

守備率 = (刺殺 + 補殺) ÷ (刺殺 + 補殺 + 失策)

打率は、安打数÷打数から算出される指標です。

一方で、守備率の計算式は上記の通りで、簡単に言ってしまえばすべての守備機会のうちアウトにした数となります。


この打率というのはいわば決められた範囲(ゾーン)に来た投球に対する処理能力です。

打撃の場合、投球に対して対処しなければならない範囲(または対処しなくてもよい範囲)であるストライクゾーンが打者によらず一律に決まっています。


一方で、守備率というのはあくまで守備機会となった打球に対する処理能力ですが、ある打球が守備機会になるかどうかというのはプレイヤーの能力に依存します

たとえば同じようなコース、速度で飛んできた打球に対し、A選手は打球に追いつくことができる(守備機会となる)のに対し、B選手は打球に追いつくことができない(守備機会とならない)という場合が考えられます。

この場合、B選手のプレイは守備機会とならないため守備率の計算にはカウントされません。

このように、A選手が処理できた打球をB選手は処理できなかったという事実が守備率では適切に反映されないのです。

ですから、この守備率はプレイヤーの真の守備力を表すものとは言えません。


このように、打率と守備率は似て非なる指標なのです。

UZRでは打球基準でどれだけのアウトを上積みしたかを考える

もしも打率と同じ概念で守備の指標を算出したいのであれば、打率と同じように決められたゾーンに飛んできた打球に対する処理能力を算出することが求められるのです。

上記の概念を導入したのがUZRです。

UZRの算出にあたっては、まずグラウンド内のゾーンを区分し、各ゾーンに発生した打球の種類と速度を記録し、それらの打球の処理確率(難易度)を算出します。

この難易度に基づいて個々のプレーを評価するのです。

具体的な例としては、以下の通りです。

例として、平均的には15%の割合で中堅手がアウトにし、10%の割合で左翼手がアウトにし、残りの75%はヒットになるような外野へのライナーを考える。この打球について、仮に中堅手が捕球しアウトを成立させたなら、通常は25%しかないアウトの見込みを100%にしたものとして中堅手は100%と25%の差分である0.75「プレー」の評価を得る。

引用元-Wikipedia

UZRの計算式は複雑で、守備範囲以外にも以下のような構成要素が存在します。

  • RngR(守備範囲)
  • ErrR(失策)
  • DPR(併殺)
  • ARM(送球)

UZRは主観に頼らざるをえなかった守備能力を客観的に可視化した指標

UZRが登場する以前は、守備の能力というのはきわめて印象(主観)に左右されやすいものでした。


プレーだけで見た場合、簡単そうに難なく捌くよりも、難しそうに捌く(飛びついてキャッチするなどした)ほうが”凄い”プレーをしているように感じられるかもしれません。

ですが、打球基準でみると実は両者で打球の質(飛んできたコース、速度)は変わらないかもしれません。

その場合、両者のした仕事は本質的には同じということになります。

にもかかわらず、両者に異なる評価を下してしまうのであれば、それは主観による認識の誤り以外の何物でもないのです。


UZRはこれまで主観に頼らざるをえなかった、または主観に大きく左右されていた守備能力を客観的に可視化した指標であり、このUZRの登場により守備型プレイヤーの貢献度を正当に評価できるようになったのです。


【セイバーメトリクス指標の解説はこちらから】

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