野球のデータ解析システム「スタットキャスト」とは?【野球のプレーの数値化】

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近年、野球におけるデータ分析の技術が急速に発展しています。

特に野球の本場であるアメリカのメジャーリーグ(MLB)におけるその進歩は目覚ましく、最新のテクノロジーによりピッチング(ボール)の質、バッティングの質、守備の質などといった野球のあらゆるプレーが数値化されるようになっているのです。


今回は、そんな現代野球のデータ分析において非常に重要な役割を担っている「スタットキャスト」についてご紹介させていただきます。

データ分析の対象は「結果」から「過程」に

これまでの野球選手の能力を評価するのに使われる評価指標と言えば、打者で言えば打率やホームラン数、投手であれば防御率や勝ち星などといった指標でした。

ですが、これらはあくまで結果の指標です。

これらの指標は選手自身の能力だけでなく、運や試行数などにも大きく左右されるものです。

ですから、選手本来の能力と相関性の高いデータや指標などの分析が行われ、統計的な見地からのデータ分析手法(セイバーメトリクス)が発展してきたのです

セイバーメトリクスについては以下の記事を参考にしてください。)

【参考記事】


このデータ解析に用いられるデータというのは、ひと昔前まではやはり選手が残した「結果」のデータでしかなかったわけです。

それが近年変わりつつあります。


選手本来の純粋な能力を測りたいのであれば、選手が残した結果よりもその上流にある選手のプレー内容(過程)を判断に用いるほうがより効果的です。

データ分析の対象は「結果」から「過程(原因)」に移行しつつあり、その実現に大きく貢献しているのがこの「スタットキャスト」です。

スタットキャストは結果に至る過程、すなわち野球のプレーを定量化してくれるものです。

野球のプレーを可視化するスタットキャストとは?

スタットキャスト(英: Statcast)は、アメリカ合衆国のメジャーリーグベースボール(MLB)で導入されているデータ解析ツールであり、ステレオカメラやレーダーを使用して選手やボールの動きを高速・高精度に分析するためのもの。

引用元-Wikipedia

具体的には、ボールの動きを追尾するレーダー「トラックマン」と、カメラにより選手の動きを追跡する「映像解析システム」から構成されています。


このスタットキャストは現在メジャーリーグの全球団の本拠地に導入されています

スタットキャストにより取得されたデータはWEB上に公開されていて、誰でも自由に閲覧することが可能です。

また、メジャーリーグの野球中継ではリプレイ映像などにこのスタットキャストのデータが使われていて、実際のプレーにスタットキャストのデータが合成されて画面に映し出され、それにより視聴者は視覚的に選手のプレーを捉えることができるようになっています。


スタットキャストにより選手の評価の信頼性が向上するのはもちろんのこと、スタットキャストにより取得したデータを解析することは選手のパフォーマンスの改善にもつながります

優れた結果に結びつくデータや指標が明らかになっていくことで、それを向上させていくための理論やメカニックの研究も進むからです。

ここ数年メジャーリーグを席巻している「フライボールレボリューション(フライボール革命)」はその象徴と言えるでしょう。

スタットキャストにより可視化される野球のプレーとは

現在、スタットキャストにより測定できる項目数は実に80項目以上に上ります。

ここでは、スタットキャストにより測定できる項目の一部と、それによりどのようなことがわかるようになるかについてをご説明します。

投球

投手が投じたボールの「球速」や「回転数」、「ボールの変化量」などを測定することができます。

現代では、ストレートの質を決める構成要素として球速のほかにボールの回転数と回転軸があることがわかっています。

この回転数と回転軸の違いによってストレートの揚力(変化量)に違いが生じるため、同じ球速帯であってもストレートの質に違いが生まれます。

スタットキャストによって、そのような「ストレートの質」が可視化されるわけです。

打撃

打者が打ち返した打球の「打球速度」や「打球角度」、「打球距離」などを測定することができます。

最近の研究により、打球の強さ(速度)とその打球がヒットになる確率には相関性があることや、長打になりやすい打球速度✖️打球角度(バレルゾーン)の関係が明らかになってきました

ですから、現在のメジャーリーグではヒットまたは長打になったという結果以上に、強い打球を打つことやバレルゾーンの打球を飛ばすことがより重要視されるようになってきています。

走塁

走者の「最高速度」や「各塁までの到達時間」などを測定することができます。

それにより、単純な足の速さに加え、走塁のうまさ(技術)を知ることもできます。

守備

守備における「始動時間」や「打球を追う速度・走路」などを測定することができます。

守備の良し悪しというのは非常に印象(主観)に左右されやすいものでした。

守備の動きとしては打球に追いつく直前の動きにだけ注目が集まりやすく、たとえば打球に飛びついて捕球すればあたかもファインプレーをしたかのように見えてしまいます。

ですが、最初の一歩が早くかつ打球の追い方がうまい(打球に対して一直線に向かえる)選手であれば、同じ打球に対してより早く追いつくことができ、飛びつくことなくその打球を処理できるかもしれません。

その場合、ファインプレーには見えないかもしれませんが、守備の動きをトータルでみればこちらのほうが優れたプレーであるといえるのです。

スタットキャストは、そんな印象に左右されやすい守備のプレーの良し悪しに確かな客観性を与えてくれるものなのです。


【参考サイト】

スタットキャストとは?メジャーの最先端技術を紹介!(2018.06.07 ベースボール・ギークス  )

スタットキャスト(Wikipedia)

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